外反母趾
がいはんぼし
外反母趾は足の親指の付け根が変形して内側へ曲がることで痛みを発症する疾患です。
親指側の変形を外反母趾、小指側の変形を内反小趾 (ないはんしょうし) と呼びます。
外反母趾の症状は?
外反母趾になると次のような症状が現れます。
- 親指の付け根が痛い
- 親指の付け根が出っ張る
- 横アーチが無くなる
- 靴に当たるようになる
- 「パー」ができない
外反母趾になると親指の付け根の痛みや変形が現れます。
進行すると地面からの衝撃を吸収、軽減するための足の甲を形成している横アーチが崩れ、足が横に広がった扁平状の変形も特徴的です。
外反母趾は痛みが無いものもあります。しかしこの状態が長期間続くと足のアーチ不足により体全体に影響してきます。
また、指で「パー」が出来るかどうかを見れば外反母趾かどうかをある程度確認する事ができます。
後に記載しますが、外反母趾は15°以上親指が人差し指側へ曲がった状態です。その状態は親指を「パー」に出来ない状態になります。
ご自身が外反母趾かな?と思ったら「パー」をしてみて指が開かない状態であれば外反母趾と考える必要があります。
外反母趾の原因とは?
外反母趾になる原因はいくつかあります。その中でもハイヒールなどの靴による変形が大多数を占めます。
- ヒールなどの合わない靴
- 先天性 (生まれつき)
- リウマチや膠原病など
- 扁平足
- 初心者のクラシックバレエ
- ゴルフなど (番外)
1.ヒールなどの合わない靴
外反母趾の中でも最も多いものが靴による原因です。特にハイヒールは爪先立ちの上、靴の形が先端へ行くほど尖っているために足の指が変形しやすくなります。
ヒールの癖が付いてしまうと靴を脱いでいても足の指が反った浮き指となり横アーチが崩れてしまいます。
2.先天性 (生まれつき)
足の形が先天的に外反母趾状となっていて横アーチも無いため足や腰、膝の故障が多くなります。
また、先天性のものには男性にも比較的多く見られます。
3.リウマチや膠原病など
リウマチなどの自己免疫疾患は自分自身の体が自分の骨や関節などを壊してしまいます。そのため足が外反母趾状に変形する事が多くなります。
リウマチ性の外反母趾は関節自体の破壊や脱臼、腱の断裂が見られるものもあるためテーピングなどの矯正療法は難しくなります。
4.扁平足 (へんぺいそく)
扁平足は足のアーチ (土踏まず) が無いため足が平たくなり靴に擦れやすくなります。
そのためバニオンを形成したり、指先が内側へ変形して外反母趾様の症状が現れます。
扁平足は生まれつきのものと肥満など生活習慣からなるものがあります。
一般的に8才頃までに足のアーチ (土踏まず) が作られない場合、扁平足となります。
扁平足について詳しくはこちら ⬇︎
扁平足とは?運動やインソールでの治療法
5.初心者のクラシックバレエ
バレエの練習でトゥータッチがあります。いわゆる背伸び状態での練習でハイヒールを履く状態と同じ力が指先にかかるために外反母趾となる事があります。
これは特にバレエのフォームが完成していない初心者に多く見られます。
また、指の付け根に体重がかかるためにモートン病 (モルトン病) を発症する事もあります。
モートン病について詳しくはこちら ⬇︎
6.ゴルフなど(番外)
ゴルフのスウィングでは足の親指の内側に重心がくる上、付け根の関節部分に強い力がかかります。
このためにゴルフ歴が長い人は親指の付け根の関節が腫れてバニオンを形成し外反母趾様の見た目となります。
この場合の外反母趾は正式には強剛母指 (きょうごうぼし) と言われるもので、親指を反らす動きが関節の変形による痛みで困難となります。
その他、先天的 (生まれつき) に足の親指が他の指より長い「エジプト型」も外反母趾になりやすくなります。ちなみに足の人差し指が一番長いものは「ギリシャ型」と呼ばれます。
外反母趾の検査法
それではどのような状態であれば外反母趾と確定されるのでしょうか?
外反母趾かどうかは見た目ではなく明確に決められています。足には中足骨という足の甲を形成する長い骨があります。
各指にあるので5本の中足骨があることになります。
足の親指の中足骨に沿って直線を引き、その線から15°以上、親指が内側へ曲がっているものを外反母趾と呼びます。
つまり14度以下であれば足の形として正常範囲と言うことです。
ただし、14°以下でも外反母趾に見える場合があります。これは親指の付け根が靴と擦れる事で関節が刺激のために腫れてコブのように出っ張ってくるためです。
この出っ張りをバニオン (又はバニヨン) と呼びます。
バニオンとは腱膜瘤 (けんまくりゅう) の事で、各関節にある関節包 (かんせつほう) という袋が刺激されて肥厚したものや、関節の変形により形成されます。
バニオンが形成されると更に靴と擦れるようになり痛みの悪化を繰り返します。
バニオンと似た症状のものには体のあちこちに発生する滑液包炎 (かつえきほうえん) があります。
滑液包炎について詳しくはこちら ⬇︎
外反母趾による弊害
外反母趾になると単に見た目や指の痛みが出るだけでなく、足が変形する事で地面からの衝撃が上手く吸収されなくなってしまいます。
そのため膝 (ひざ) の痛みや腰痛などを発症しやすくなり、痛みから逃れる体勢をとるために姿勢の歪みが引き起こされます。
姿勢が歪むと体の重心が前後左右に偏ってしまい、さらに関節痛や腰痛などの悪化を引き起こしてしまいます。
この事から外反母趾は痛みが出なければ問題ないという訳にはいかない事が分かります。
外反母趾の治療法
外反母趾の治し方には進行具合によって数種類の方法があります。
- 運動療法
- テーピング療法
- サポーター療法
- インソール療法
- マッサージ療法
- 手術療法
1.運動療法
外反母趾の痛みには運動により軽快するものもあります。
軽度の変形やハイヒールなどで足の指が反るクセがついた浮き指などには運動療法が効果的です。
浮き指について詳しくはこちら ⬇︎
関節可動域訓練
外反母趾の多くは関節が固まっている状態のため関節の運動を行います。この運動では足の裏側から手の指を足の指の間に交互に噛ませて曲げ伸ばしの動作をするようにします。
タオルギャザー
外反母趾では足のアーチ (土踏まずなど) が崩れて扁平な状態となっています。床にタオルを敷いて裸足になり足の指だけでタオルを手繰り寄せます。
外転矯正
これは両足の親指に紐を掛けて引っ張り合い、親指の関節を横に動かすことで固まった関節を緩める運動です。内側に曲がった関節の動きを取り戻します。
また、親指を開く運動で外反母趾の進行を防ぐ事ができます。これは足の指を開く (パーの動き) ようにして母趾外転筋を鍛える方法になります。
2.テーピング療法
外反母趾の治療として代表的な方法です。テーピングにより正常な足の形に固定、矯正する事で足の骨格に癖を付けます。
テーピング療法の欠点は皮膚が弱くかぶれ易い人には行えません。また、足にクセがつくまで数ヶ月という長期の時間が必要です。
軽度の外反母趾。変形の進行途中で痛みがあるがテーピングで改善。
3.サポーター療法
サポーターはテーピングで皮膚がかぶれる方や比較的足の変形が少なく、親指が靴に当たると痛いなどの場合に利用します。
サポーターは入浴中に外すなどテーピングよりも扱い易い反面、骨格の矯正力が弱く根本的な治療には向きません。外反母趾の悪化など進行を防ぐ事に適しています。
指の間に挟むだけの小さなものはすぐに動いてズレてしまうためおすすめできません。
扁平足からの外反母趾には足のアーチを支えるものも効果的です。
4.インソール療法
インソールとは靴の中敷きの事で、外反母趾になると足のアーチが崩れて扁平となります。特に外反母趾では横アーチが重要なため、このアーチをインソールで補います。
インソールは外反母趾の根本治療には向きませんが、テーピングやサポーターと併用するとより効果が高くなります。また、軽度の外反母趾にはインソールで痛みが消えるものもあります。
そのほか、五本指ソックスがおススメです。足の指一本一本が独立するために外反母趾の矯正はできませんが進行を防ぐ事ができます。
親指が隣の指に重なる場合も五本指ソックスである程度は引き離す事が可能です。
5.マッサージ療法
外反母趾の改善にマッサージや関節の運動が効果的です。ハイヒールの癖が付いて指が反っている浮き指状のものには足裏から指の付け根を緩めて少しずつ反りを戻します。
一番症状が出る親指には足裏の真ん中から親指にかけて腱の癒着や関節の拘縮 (固まり) を緩めていきます。
6.手術療法
親指が隣の指に乗っかるものや関節の強度の変形によって関節が脱臼しているものは関節に余分な骨 (骨棘) が作られてしまいテーピングなどの矯正が効きません。そのため手術が選択されます。
外反母趾の手術はキレイに真っ直ぐな指に戻すことは難しく、複数回の再手術も珍しくありません。
外反母趾の手術法はいくつかあり、一般的には親指の付け根部分 (特に中足骨) を骨切りし、真っ直ぐにした位置で鋼線で固定します。
骨を一度切るために再び骨癒合するまで時間がかかる事や外反母趾の再発などもあり術者の高い技術、経験が求められます。