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頭痛・後頚部痛・発熱は髄膜炎の危険性大!

頭痛・後頚部痛・発熱は髄膜炎の危険性大!

頭痛や首の後ろが凝った、首の後ろが痛い、熱が出たなどの症状が重なると要注意です。それは髄膜炎 (ずいまくえん) かもしれません。


髄膜 (ずいまく) とは?

髄膜って何となく聞くけどイマイチ分からないものなのかもしれません。

髄膜 (ずいまく) は脳や脊髄 (せきずい / 背骨) を覆っている膜で、外側を硬膜 (こうまく) 、内側を軟膜 (なんまく) と呼びます。

軟膜はさらに柔膜(じゅうまく)とクモ膜からできていて、柔膜とクモ膜の間にクモ膜下腔 (くもまくかくう) があります。

頭から背骨にかけて、つまり脳室(くも膜下腔脊髄液 (せきずいえき) という無色の液体で満たされています。

注) : 脳室 (のうしつ) は脳の中にある脊髄液で満たされた空間の事です。頭の左右に1つずつと真ん中に2つの計4つの脳室があります。

脊髄液とは何か?

脊髄液は髄液 (ずいえき) や脳脊髄液 (のうせきずいえき) とも呼ばれ、脳室の脈絡叢 (みゃくらくそう) から出る無色透明の液体です。

脊髄液は脳の部分と背骨の部分を満たしていて脳や脊髄を保護する役割があります。ちょうど脳が脊髄液に浮いているようなイメージです。

脊髄液の役割

  • 中枢神経を衝撃から保護する
  • 中枢神経の不要物質を除去する
  • 頭蓋内圧の調整をする

中枢神経 (ちゅうすうしんけい) : 神経が集まっている所。脳と脊髄が中枢神経。手足は末梢神経と呼びます。

脊髄液 (髄液) にはこれらの役割があります。特に頭の中の圧力を調整しているため、半身麻酔などでは注射針を刺した穴から脊髄液が漏れて脳の圧力が下がり、頭痛を発症する事があります。

また、交通事故などで起こる「むち打ち」の外傷により硬膜に傷が付き脊髄液が漏れる (脊髄漏 / せきずいろう) 事があります。

そのため「むち打ち」後は長期にわたり頭痛などの後遺症に悩まされる事があります。

むち打ち / 首の痛み・頭痛



髄膜炎の症状とは?

ここで肝心な髄膜炎の症状ですが、髄膜炎を起こすと発熱や頭痛など風邪のような症状が現れます。

また首の後ろが硬くなり肩凝りがひどくなった様な状態になります。その後、光に過敏になったり吐き気などが現れます。

髄膜炎が進行すると意識障害けいれんを発症し、死亡するケースも珍しくありません。また、急速に進行する場合が多く早期の適切な治療が重要となります。

髄膜刺激症状(ずいまくしげきしょうじょう)

髄膜刺激症状とは脊髄液に感染が起こると現れる体の反応です。この反応には次のような症状が現れます。

髄膜刺激症状

  1. 頭痛
  2. 吐き気
  3. 項部硬直(こうぶこうちょく)

これらが脊髄液の感染により起こる髄膜刺激症状の3大徴候です。項部硬直 (こうぶこうちょく) とは首の後ろが硬くなり強い痛みや張り感を伴います。

また、仰向けで頭を持ち上げられると無意識に首が曲がらないように抵抗してしまいます。

その他の髄膜刺激症状

さらに髄膜刺激症状の特徴には次のような検査で陽性となります。

  1. ケルニッヒ徴候
  2. ジョルト・サイン
  3. ブルジンスキー徴候
  4. neck flexion test
1.ケルニッヒ徴候

ケルニッヒ徴候とは1人が仰向けに真っ直ぐ寝た状態で片足の膝を立てます。もう1人がその股関節を曲げながら膝を伸ばすと太ももの筋肉が異常に突っ張る状態です。

この検査は体が硬い人は判断が難しいかもしれませんね。

2.ジョルト・サイン

頭を素早く左右に振る事で頭痛が増悪するようであれば陽性となります。これも通常の頭痛であっても痛そうですね。

3.ブルジンスキー徴候

ブルジンスキー徴候には2種類の検査で次のような症状が現れます。

  • 検査を受ける人が仰向けに真っ直ぐ寝転んだ状態で、もう1人が寝ている人の頭の後ろと胸に手を当て抑えます。そのまま頭の方の手でゆっくりと頭を起こして行くと、真っ直ぐに寝ている両方の足が曲がり立膝になるという症状が現れます。
  • もう一つの症状は、真っ直ぐに寝ている人の片足を持ち股関節を曲げて行くと、伸ばしているもう片方の足が曲がってきます。更に強く股関節を曲げると逆に曲がった反対側の足が伸びてきます。これを対側下肢徴候 (たいそくかしちょうこう) と言います。
4. neck flexion test

こちらは簡単な検査法です。真っ直ぐにした姿勢から下を向いて顎 (アゴ) が胸に付けば正常です。髄膜炎では首の後ろが硬くなるためこの動作が困難となります。


これらの反応が陽性であれば髄膜炎の可能性が非常に高くなります。

髄膜炎イメージ

髄膜炎の原因とは?

髄膜炎は漠然と怖いようなイメージがありませんか? 髄膜炎には次の2種類の原因があります。

  • ウイルス性 (無菌性) 感染
  • 細菌性感染

髄膜にウイルスや細菌が感染すると髄膜炎を発症します。髄膜炎の中でも細菌による感染は重症化しやすいため早期の適切な治療が必要です。

ウイルス性 (無菌性) 感染

無菌性髄膜炎 (むきんせいずいまくえん) とも呼ばれ、脊髄液に細菌が検出されずウイルスによる感染が確認されます。ウイルスはエコーウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルス、ムンプスウイルスやマイコプラズマなどが原因となります。

細菌性感染

化膿性髄膜炎と呼ばれ、髄膜炎の中でも重症化しやすいのが細菌 (髄膜炎菌) による感染です。進行が早く、2日ほどで意識がなくなる事もあります。治療が遅れるなど菌が全身に回れば死亡するケースが非常に高くなります。

インフルエンザ桿菌 (かんきん) や肺炎球菌 (はいえんきゅうきん)、髄膜炎菌 (ずいまくえんきん) など様々な細菌感染で発症しますが、ワクチンの普及でその数は減少しています。

細菌性感染では適切な治療を受けても15%前後の確率で手足の壊疽 (えそ) や聴覚障害、言語障害などの後遺症を残すと言われています。
壊疽 (えそ) : 組織が腐る事。



髄膜炎の検査法は?

先述のような徴候が現れる場合、髄膜炎の可能性が高いため病院ではさらに詳細な検査が行われます。

検査には血液検査や背中から注射器で脊髄液を取る腰椎穿刺 (ようついせんし) を行い感染の有無を調べます。

 

余談ですが、腰椎穿刺は脳に腫瘍や外傷がある場合、脳圧が高くなっている状態で行うと、脳が圧力の低い方へ逸脱する脳ヘルニアが起こり命を落とす危険があります。

実際に頭部の外傷で意識の無い状態の方が腰椎穿刺をされかけたという話を本人から聞いた事があり、その危険性を聞いてゾッとした記憶があります。

どのような治療をするか?

ウイルス性髄膜炎の治療

ウイルスに対しては対処療法となります。髄膜炎の中でもウイルス性感染は比較的軽い事が多く、対処療法で経過観察を行いながら治癒を待ちます。

ウイルス性ですので特効薬はありませんが2週間程度でほとんどが治癒します。

細菌性髄膜炎の治療

一般的には抗菌剤による治療が行われます。抗生物質を大量投与して髄液を採取、検査しながら抗菌薬を変えていきます。

また、糖尿病や慢性腎不全などからの感染、副鼻腔炎、中耳炎が引き金となる事もあるため原因疾患の治療も必要となってきます。

まとめ

なぜ髄膜炎を取り上げたかと言いますと、これは非常に見逃されやすい疾患だからです。

命にも関わるこの疾患はレントゲンに映る訳でもなく、また首の捻挫や寝違え、かぜ症状の頭痛や発熱などと診断される事がよくあります。

セルフチェックで上記のような症状があり、病院へ行って処方された内服薬 (主に解熱剤や痛み止め) を飲んでも症状が全く軽快しなければすぐにセカンドオピニオン (転院) や再診を受けることをお勧めします。

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