腱鞘炎
けんしょうえん
腱鞘炎とは、主に腱(けん)が腱鞘(けんしょう)というトンネルで擦れて炎症を起こし指や手首などに痛みが出る症状です。
手作業が多い方や飲食店の方は非常に身近な疾患です。
出典 日本手外科学会「手外科シリーズ 2」 / ③が腱鞘
腱鞘炎で多い体の場所は手の親指の付け根に最も頻発します。その部分で起こる腱鞘炎を「ド・ケルバン病」と呼ばれます。手首や肩などでも腱鞘炎は起こります。
手の甲側に出る腱の痛みを腱鞘炎と言い、手のひら側に痛みがでて指を動かすと引っかかる腱鞘炎を「弾発指(ばね指)」と言います。
弾発指(ばね指)についてはこちら ⇩
腱鞘炎の症状
手の腱鞘炎の症状
親指の腱に痛みが出た場合、日常生活にかなりの影響が出ます。カバンを持つ、鍋を振る、パソコンを打つなどの度に手首の辺りがズキズキします。
その他、「ペンで字を書く」動作や「雑巾を絞る」、「ドアノブを回す」動作でも強い痛みを発症します。
肩の腱鞘炎の症状
腱鞘炎の多くは手に現れますが、腱の炎症ですので肩などでも発症します。
腕から肩に付いている上腕二頭筋という「力こぶ」の筋肉は二頭筋という名のとおり、二股に分かれて肩の骨に付きます。
二頭筋の腱は長頭・短頭という2つの腱になります。そのうちの「長頭腱(ちょうとうけん)」が肩辺りの上腕骨の前面にある腱が通る溝(上腕骨結節間溝 / じょうわんこつけっせつかんこう)と擦れて痛みを発症します。
この際、腕を伸ばしたまま後ろに手を挙げる時や、腕を捻る時、さらに肩と腕の関節部分を前から押すと痛みを感じます。
上腕二頭筋長頭腱の腱鞘炎と五十肩は痛みの場所が似ているため間違えないように注意が必要です。
上腕二頭筋長頭腱炎と四十肩・五十肩について詳しくはこちら ⇩
上腕二頭筋長頭腱炎 / 肩の痛み 四十肩・五十肩 / 肩の痛み
腱鞘炎のメカニズム
まず腱ですが、筋肉は骨に移行していくにつれて細くなりヒモ状になります。そのヒモ状の部分を腱と言い、その腱がくっついた骨を引っ張ることで指などの関節を動かせます。
腱は指などの各関節にある腱鞘(けんしょう)という筒(トンネル)の中を通ります。
腱鞘は腱を支持して腱が脱線して力が逃げないように力の支点となり、腱が指などを動かすのを補助する役割があります。
親指の付け根(手首のところ)は腱鞘炎に似た痛みがでる「母指CM関節症」があります。これは使い過ぎによる関節軟骨の変形です。
CM関節症について詳しくはこちら ⇩
腱鞘炎になる原因は?
手の腱鞘炎の原因
単純に指や手首の使い過ぎで腱が腱鞘(腱を包んでいるトンネル)と擦れて発症します。
特に最近ではパソコンや職業 (鍋を振る・ハサミで切る) などの繰り返しで腱が炎症を起こし痛みが出ます。
ド・ケルバン病は産後の女性のホルモンバランスでも起こる事があります。
腱鞘炎の診断は親指を折り曲げたまま手首を伸ばすと痛みがでる「フィンケルステインテスト」が多く行われます。
このフィンケルステインテストで手首の親指側に痛みがあれば腱鞘炎の可能性が非常に高くなります。
画像:フィンケルステインテスト
肩の腱鞘炎の原因
ほとんどがスポーツによるもので、腕を後ろへ引くような動きと腕の捻りが重なった動きが多い、テニス・水泳・ハンドボール・バレーボールなどで発症します。
肩の腱鞘炎について詳しくはこちらをご参照ください ⇩
腱鞘炎の治療法
手や指の使い過ぎで腱が炎症を起こしているので、まず安静です。
痛みが突然強く出たものは冷却して(慢性的な腱鞘炎は温めて血流を良くし、回復を早めます)動かさないでおけば炎症の鎮まる3日ほどで楽になるものもあります。
ただ腱鞘炎は仕事やスポーツ・趣味や楽器の演奏など安静にできないことも多いため、伸びるタイプのテーピング固定やお風呂や水仕事の時に外せる腱鞘炎用のサポーターなどで負担を減らすと回復が早くなります。
さらに前腕部の筋肉を緩めると腱の緊張が弱まり痛みが緩和されるものもあります。
通常、安静を保っても痛みがなくならないものにはステロイド注射が行われます。
このステロイド注射は数回しか使えませんので、それでも痛みがとれない時は腱鞘(腱が通る筒)を外科的に切ることもあります。
注意すべきは数ヶ月に渡る固定により腱が癒着を起こすことです。
長期間固定していたのに少しでも親指を曲げると激痛が続くものには安静とは逆にリハビリで腱を動かしていかなければなりません。
腱がスムーズに動くようになる事によって痛みが急速に緩和されることがあります。
腱鞘炎は日常生活の動きで発症することが多いため、なかなかその生活を変えることが難しく、治るのに時間がかかる厄介な痛みです。