胸郭出口症候群
きょうかくでぐちしょうこうぐん
胸郭出口症候群とは、首や肩の筋肉や骨の間を通る神経が圧迫されることにより肩の重だるさ・腕のだるさ・指のしびれを引き起こす疾患です。
原因
胸郭出口症候群は神経を圧迫する場所によって次の4つに分けられます。
- 斜角筋症候群
- 頚肋 (けいろく)
- 肋鎖症候群
- 過外転症候群(小胸筋症候群)
1.斜角筋 (しゃかくきん) 症候群
首の筋肉の内、首の横を斜めに付いている斜角筋 (しゃかくきん) という筋肉があります。斜角筋は前斜角筋と中斜角筋の2つの筋肉の間に隙間を作り、その隙間を斜角筋隙(しゃかくきんげき)と呼びます。
筋肉と筋肉の間のその隙間を
腕神経叢
と鎖骨下動脈が通ります。そのため、斜角筋隙が狭くなると、腕神経叢と鎖骨下動脈が圧迫されて神経症状が現れます。
2.頚肋 (けいろく)
首の骨(頚椎)は7個で胸の骨(胸椎)は12個から構成されていますが、肋骨は頚椎には無く胸椎から始まります。
頚肋の場合、簡単には7番目の頚椎から肋骨が生えている状態です。この頚肋があるとやはり腕神経叢の圧迫の原因となります。
3.肋鎖 (ろくさ) 症候群
首から出た神経は腕神経叢となり第1肋骨と鎖骨の間の隙間を通ります。その隙間で神経が圧迫される神経症状を肋鎖症候群と言います。
肋鎖症候群の原因は、鎖骨や肋骨の骨折など外傷後に神経が通る隙間が狭くなったものや重いものを習慣的に持つなどで起こります。
4.過外転 (かがいてん) 症候群
小胸筋症候群(しょうきょうきんしょうこうぐん)とも呼ばれます。胸の筋肉である小胸筋によって神経が圧迫されます。
小胸筋が硬くなり発症しますが、硬くなる原因としてはストレスや運動不足などの他に姿勢なども関係してきます。
腕神経叢は鎖骨下動脈とセットで同じ場所を走行をします。そのため、上記の部位で圧迫されると神経症状の他、血流障害の症状も同時に見られます。
症状
神経障害と血流障害のため、腕の痛みや小指側のシビレを生じます。
頚椎椎間板ヘルニアや肘部管症候群と症状が似ているので鑑別が必要となります。
検査法
胸郭出口症候群の徒手検査はたくさんあります。具体的にはリンクから各章のページに記載します。
- adoson テスト
- eden テスト
- wright テスト
- roos テスト
- morley テスト
- allen テスト
- 頚椎回旋側屈 テスト
これらの徒手検査で陽性であれば胸郭出口症候群の可能性が非常に高いです。
治療法
胸郭出口症候群は具体的には4つの原因がありましたが、その原因により治療法が異なってきます。
1.斜角筋症候群の治療
斜角筋症候群は首の筋肉の隙間で神経と血管(腕神経叢と鎖骨下動脈)が絞扼されて痛みやシビレが出ています。その為、絞扼を緩める方法が採られます。
⇒ 斜角筋症候群のページへ
2.頚肋の治療
頚肋は本来は無い部分に肋骨ができてしまっています。軽度なものでは保存療法で軽快しますが、骨が長いものや神経の圧迫が強いものは手術となります。
⇒ 頚肋のページへ
3.肋鎖症候群の治療
1番上の肋骨と鎖骨の間が狭いために、この部分を広げる方法が採られます。症状が強い場合、肋骨を切除する手術となります。
⇒ 肋鎖症候群のページへ
4.過外転症候群の治療
胸の筋肉の表面が大胸筋です。過外転症候群はその下にある小胸筋による神経・血管の圧迫なので、治療は小胸筋に対するアプローチとなります。
⇒ 過外転症候群のページへ
以上のように胸郭出口症候群は神経・血管を絞扼(圧迫)する部分が多く、診断には多くの徒手検査で限定して初めて確定されます。
更には類似の上肢のしびれや痛み、だるさなどの疾患との鑑別が必要となり見逃される事も多くなります。