骨折して数ヶ月しても新しい骨が出てくれなくて困ってしまう事があります。
骨が出てこなくて、骨折部分がくっつかないものは「偽関節 (ぎかんせつ) 」と呼ばれ、決して珍しいものではなく多々目にする状況です。
今回はこの「偽関節」になった時の原因や治療法などを見ていきたいと思います。
偽関節(ぎかんせつ)とは?
冒頭にありますように「偽関節 (ぎかんせつ) 」は骨折した部分がくっつかないまま治ってしまった状態です。
期間は6か月間、仮骨(かこつ / 新しい骨)が出てこないと偽関節が確定されます。まれに仮骨が出るまで時間がかかる方もいますが、その場合でも半年経過するとほぼ骨がくっつくことは望めないということです。
そこで新しい骨が出てこない状態となり、偽関節と診断されれば、一部を除いて治療法を変えなければなりません。
偽関節のままでもいいのか?
先ほど一部を除いてと言いましたが、偽関節になった場合、基本的には治療法を変更する必要があります。
ですが、骨折の中には偽関節(骨がくっつかないままの状態)でも生活に支障が少ない場所があります。
例えば鎖骨(さこつ)骨折は偽関節となる可能性が高い場所です。鎖骨骨折は腕の重さがかかる上に良く動いてしまう場所で、完全に固定するのが難しいことが上げられます。
そのため鎖骨骨折で偽関節となり、手術をどうしても受けたくない場合ではそのまま(折れて治ったまま)生活していく選択があります。
骨がくっつかない状態で大丈夫なのかどうかですが、鎖骨の場合、多くは腕も上げる事ができますし、通常の動作はほとんど不自由なく可能です。
ただ、やはり腕を上げる際も力が入りにくかったり、鎖骨の折れた部分が皮膚の上から出っ張って見えることもあります。また、肩幅が骨折した側だけ狭くなり見た目のバランスも悪くなることがあります。
鎖骨以外にも足の小指など偽関節となったらそのままにしておく骨折はいくつかありますが、基本的には骨を再びくっつくようにする治療が行われます。
上記以外にも、偽関節が頻発する手の舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折は要注意です。
舟状骨骨折の詳細はこちらから ⇩
偽関節になる原因は?
骨折した骨がくっつかない理由は様々で、本人の努力次第では骨がくっついた可能性もあったと言う事もあるため、原因を知っておくと役立つかと思います。
偽関節になる原因として多いものは次のようになります。
- 固定が緩い。固定がズレている。
- 整復時に軟部組織が挟まっている。
- 固定期間中に骨折部を動かした。
- カフェイン、アルコール過剰
- 骨自体が出ない。
1. 固定が緩い。固定がズレている。
これは治療をする側の問題ですが、ギプスシーネの作製や材質の選択、包帯固定の技量の未熟さ等で、骨折した部分が固定しても動いてしまっている場合です。
骨折は骨同士がくっつく前に折れた部分が動いてしまっていると偽関節となります。
病院で骨がズレたら手術すれば良いくらいに考えて固定が適当である場合、保存療法にこだわるのであればセカンドオピニオンをお勧めします。
2. 整復時に軟部組織が挟まっている。
肘頭骨折で折れた骨を再び元の位置に戻す整復を行った際、筋肉などの軟部組織 (なんぶそしき) が骨と骨の間に挟まっていて、骨がくっつくのを阻害してしまいます。
この場合、ある程度の期間で改善が見られない時は偽関節となるため手術を選択する必要があります。
3. 固定期間中に骨折部を動かした。
どんなにしっかり固定していてもケガをした本人が動かしてしまう事があります。
子供であればギプスシーネ (当て木) をギプス固定 (グルグル巻きのギプス) に変更するなど、ある程度動かす前提で固定する必要があります。
また、骨折は固定がしっかりしていると骨折した部分が動かないため、痛みがほとんど感じなくなります。
その事から骨折を軽く見てしまい動かしてしまうケースがあります。
頻繁に患部を動かしていると骨はくっつかず偽関節となります。
4. カフェイン、アルコール過剰
カフェインやアルコールの過剰摂取はカルシウムの吸収を妨げ、骨折の治りを悪くすると言われています。
また、喫煙も骨がくっつく事を阻害すると言われています。
5. 骨自体が出ない。
一番どうしようもないケースです。珍しいわけでもなく、一定の方は新しい骨が出てこないケースがあります。
この場合、偽関節となる前に固定を見直したり、新しい骨 (仮骨) が出てくるのを促す超音波や微弱電流を24時間装着して経過を見ます。
それでも仮骨が出ない時は手術となります。
何故だか分かりません。ただ、多くの方に共通していて驚きました。
偽関節になり易い場所は?
骨がくっつかない偽関節は、骨の折れ方によってくっつき易いものとくっつき難いものがあります。また、固定や整復が上手くいっていないこともあります。
この事から偽関節になりやすい体の場所を挙げてみたいと思います。
これは個人的な経験上の認識も含みます。
- 舟状骨
- 鎖骨
- 椎体圧迫骨折
- 上腕骨骨幹部
- 大腿骨骨幹部
- 大腿骨頚部骨折
- 第5中手骨頚部骨折 など
特に骨幹部骨折と名が付くもので、真っ二つに折れた (横骨折) ものは注意が必要です。
骨がくっつくことに関して良くある疑問
ここでは骨折した方から良く聞かれる疑問について触れたいと思います。
歳だから骨はくっつかないのでは?
90代でもくっつくので大丈夫です。ただ、成長期のように大勢な修復力までは難しいです。
カルシウムを摂ると早く治るの?
残念ながら変わりません。食べ物で早く治すという効果は確認されていませんが、超音波が早く治す効果が確認されています。また、逆にアルコールやカフェインの摂り過ぎはカルシウムの吸収を妨げるため控えた方がいいです。
冷やすのと温めるのどちらがいいの?
骨折はケガをした初期には冷やしますが、その後は血流をよくするため温めます。
腫れが数か月しても引かないのはなぜ?
この場合、腫れではなく「むくみ (浮腫) 」です。腫れは1週間ほどで落ち着いてきて1ヶ月もすればほぼ無くなります。逆に関節を固定しているため、血流やリンパ液が滞り「むくみ」が目立つようになります。この「むくみ」はギプスを外しても半年以上は残る事が多いので心配はいりません。ただし手術後、血管の中に血栓が出来てしまいむくみが出たものは要注意です。
骨が折れた部分は折れる前よりも強くなるって本当?
概ね本当です。通常、骨が折れた部分は体が次の衝撃に耐えようとして大いに仮骨が出て太くなります。ただし新しい骨があまり出ない場合は逆に弱くなる事もあります。
将来、古傷として痛みが出る事はあるの?
場所によりあります。更に成長と共に、近くの神経を巻き込んでしびれが出る場合や、成長線が傷ついていて曲がってしまう事もあります。
リハビリをしなくても治るの?
骨折にはリハビリが必要ないケースもあり、足の指などはほぼ放置で問題ありません。ただし折れた場所によりけりで、複雑に折れたものや手術をして固まったものなどはしっかりリハビリをしないと動かなくなります。
手術で骨を固定した金具は取り出すの?
通常は1年〜1年半くらいに抜鋼 (ばっこう) という手術で抜き取ります。ですが、年齢や折れた箇所、神経に絡んでいるものなどではそのままにしておく事もあります。
偽関節の治し方
偽関節となってしまった場合、治療法は手術しかありません。
6ヶ月以上経過した骨折は、手術でくっついていない骨折部を再度確認します。
骨折した骨は折れた断面が鋭く尖り、指や紙が切れるほどです。その断面は時間の経過と共に丸く滑らかになって骨が付く細胞も出てこなくなっています。
そのため、偽関節となり滑らかになってしまった骨の断面をワザと削って傷を付け、修復時に再び骨がくっつくようにします。
更にその断面に本人の骨盤から削り取った海綿骨 (かいめんこつ) を偽関節部に骨移植(詰めて)再度固定します。(人工骨の事もあります)
こうする事で新しい骨 (仮骨) が再び活発に出て来るようになり治癒します。
まとめ
骨折して手術も終わり一安心。と思ったら骨がなかなかくっつくかないとなれば、精神的な苦痛は相当大きくなります。
本当に仮骨が出るのが遅い人もいるため、3〜4ヶ月経過しても諦めない事が大事です。
もし偽関節となっても骨を付ける手段は残されているので、前向きに頑張りましょう!