急性腰痛症 (ぎっくり腰)
きゅうせいようつうしょう (ぎっくりごし)
急性腰痛症は「ぎっくり腰」と呼ばれ、ある動作を機に、急激に腰に激痛が出る疾患です。
そのため海外では「魔女の一撃」と呼ばれ恐れられています。
ぎっくり腰の原因
急性腰痛症 (ぎっくり腰) の原因として多いのは次のような動作です。
- 朝の洗顔時
- 靴下を履く時
- 靴を履く時
- 荷物などを持ち上げた時
- 車から降りる時
- 物を拾う時
- くしゃみ
- 椅子から立ち上がる時
ぎっくり腰の多くは腰を軽く曲げた状態から真っ直ぐに伸ばす過程で急激に発症します。また、子供や荷物を持った状態で腰を捻ると高頻度で発症します。
他に椅子などに長時間座った状態から立ち上がる際にも激痛と共に発症する事が多くなります。
日頃から腰痛持ちの方が突然クシャミをすると腰に痛みが走るという経験をされた方は多いかと思います。
この時、腰の状態により急激な痛みであるぎっくり腰が起こる事がよくあります。
ぎっくり腰の種類
急性腰痛症 (ぎっくり腰) は大きく次の3タイプに分けられます。
急性腰痛症のタイプ
- 筋・筋膜性腰痛タイプ
- 腰椎捻挫型タイプ
- 神経圧迫型タイプ
1.筋・筋膜性腰痛タイプ
筋肉の慢性的な疲労の蓄積で発症するギックリ腰で、日常的に長時間のデスクワークや運転、立ち仕事などにより筋肉疲労がピークに達していると、些細な動作でいつでも「爆発」する状態となります。
つまりこの疲労蓄積型タイプでは何かの動作がきっかけでぎっくり腰になりますが、たとえその動作をしていなかったとしても他の動作時にいずれは発症する事になります。
2.腰椎捻挫型タイプ
いわゆる元祖ギックリ腰です。急性腰痛症 (ぎっくり腰) と言えば大半はこのタイプで、腰の背骨である腰椎同士の関節 (腰椎椎間関節) が「引っかかる」事により激痛となります。
また、骨盤部分の腸骨と仙骨の間の関節である仙腸関節の引っかかりが原因となる事もあります。
よくぎっくり腰が一回の治療で治ったとか、どこどこの先生の所では直ぐに治るなど聞くかと思います。
その大半はこのタイプで、ぎっくり腰は安静よりも動かして治すという理論などもこの捻挫型に当てはまります。
3.神経圧迫型タイプ
腰椎には椎間板という各背骨の間にあるクッションがあります。
この椎間板に重い荷物を持ち上げたり、加齢や運動不足により椎間板の柔軟性がなくなった状態で強い負荷がかかると潰され神経を圧迫します。
一度強く圧迫された神経は炎症を起こし、椎間板からの圧力が軽減されても3日程は強い痛みが続きます。
ぎっくり腰の症状
急性腰痛症 (ぎっくり腰) と言っても軽いものから超重度なものまであります。
一般的なぎっくり腰では先述のような動作で腰に急激に電流が走るような激痛が走り動くことが困難となります。
特に神経圧迫型タイプでは下肢へのしびれも発症します。
受傷時は一歩も歩けないこともあり、炎症が強いものでは横になって寝ていても楽な姿勢が無く、どの方向へ向いても強い痛みに苦しみます。
かろうじて歩けるものでも腰は伸びずに前屈みとなり、手で腰を抑えながら背中を丸めた状態となります。
また、ぎっくり腰の状態により座っていると全く痛みを感じないが立ち上がったり歩いたりする事で激痛が出るものや、逆に座っていると激痛のため立っている方が落ち着くものもあります。
ぎっくり腰の治療法
急性腰痛症 (ぎっくり腰) の治療は一言に「ぎっくり腰はこうすれば良い」という訳ではなく、ぎっくり腰のタイプ別で考えなければ逆に悪化させたり治りを長期化させてしまいます。
1.筋・筋膜性腰痛タイプ
まず安静です。筋肉、筋膜の炎症や場合によっては筋断裂もあるため3日間は安静にします。
更にアイシングで炎症を鎮めることができれば、横になっている状態なら痛みを感じなくさせる事が可能です。
強い炎症が落ち着く4日目からは比較的ゆっくりなら歩行が可能となります。1週間目で痛みはあるが距離も歩ける状態になります。
2.腰椎捻挫型タイプ
動かします。仰向けの状態で両膝を両手で抱えゆっくりと小さく左右に振リます。
強い痛みと不安で痛みを訴えますが少しずつ動きを大きくしていく事で「引っかかり」が外れ楽になります。
痛みに余裕があれば腰を捻るようなストレッチを行います。 ( 腰部脊柱管狭窄症や他のタイプのぎっくり腰ではやってはダメです)
少しずつ動かしてみて痛みが和らぐようであれば早い治りが期待できます。
動かして後日痛みが増すようであれば動きを小さくするか安静に切り替える必要もあります。
3.神経圧迫型タイプ
安静です。神経が圧迫されると数日は神経が過敏になり強い痛みが続きます。
そのため神経を興奮させないように3日間程度は極力安静とし痛みの状態を見ていきます。
多くは1週間以内にゆっくりとなら歩けるようになりますが、神経の圧迫状態により長期間の腰痛や神経痛が残る事があります。
炎症期が過ぎたら痛みの状態に合わせて物理療法や運動療法に切り替えて治療を行います。
たとえ腰椎椎間板ヘルニアとなっていても、飛び出して神経を圧迫している髄核 (椎間板) は分解され吸収されていくので、焦らずしっかりと治療していきます。
全てに共通する治療法
薬剤による治療
神経ブロック注射や鎮痛剤の座薬、内服により痛みを和らげる事が可能です。鎮痛剤は炎症止めにもなるため急性期の痛みでは効果があります。
ただし治る期間は変わらないことも多く、痛みのケアをしながら最低限の生活と安眠を取るための手段としての治療効果は高いです。
コルセットによる固定
以前は晒 (さらし) などでガッチリ固定する事が多く行われましたが、現在はコルセットの種類も増え様々な腰痛や体型、服装に合うものを選べるようになりました。
コルセット (腰部固定帯) は圧迫する事により腹圧を高め、背骨や筋肉の負担を減らし安静を保つことが可能なため、ぎっくり腰には特に重宝します。
ただしコルセットは横になっている時や食事の時は外すようにして締め続けない事が大事です。
理由は長期間装着した後に外した時、不安定さや固まった筋肉や背骨に負荷が一気にかかり痛みをより感じる事があります。
他にコルセットの上下 (特に上) の部分に圧迫による別の痛みが出る事もあります。
⇓ 安価ですがクリニックでも使用される信頼性の高いコルセットです。
ウォーキング
ウォーキングは安全で骨盤周りの関節運動として最適です。
さらにウォーキングによる適度な背骨への刺激は、椎間板に柔軟性を与え弾力性に富む丈夫な椎間板となります。
また、血流が良くなり筋肉の緊張が取れ、リンパの流れが改善されるためぎっくり腰後のリハビリとして効果的です。
ただし、一日に1万歩以上歩くことは逆に故障が多くなるという統計があるため、一日に6千歩〜8千歩程度を目安に行うと良いようです。