足底腱膜炎 (足底筋膜炎)
そくていけんまくえん (そくていきんまくえん)
足底腱膜炎(足底筋膜炎)とは歩くと足の裏の踵 (かかと) や指の付け根部分に痛みの出る疾患です。
足底腱膜炎は足底筋膜炎とも言われますがこれらは同じものです。
足底腱 (筋) 膜とは?
足底腱膜 (そくていけんまく) とは足の裏にハンモック状に張っている腱の膜です。
この腱膜はそれぞれの足の指の付け根から踵 (かかと) まで張っていて足のアーチ構造 (土踏まずなど) を形成支持しています。
足底腱膜炎の症状
足底腱膜炎の9割は踵 (かかと) に痛みが出ます。踵でも特に内側に多く、歩行時以外でもこの部分を指で押すと強い痛みがあります。
痛みは足をつく度に「ズキッ」とした感覚が連続します。つま先や小指側など地面への足のつき方を工夫しても痛みは変わらないため強いストレスとなります。
朝、起床時の歩き出しの痛みも特徴的です。朝だけでなく長時間座っていた状態から歩き出した時にも痛みが強く出る事が多いです。
足底腱膜から踵に長期間の刺激や牽引力が継続すると骨に棘のような「骨棘(注」がレントゲンで見られる事があります。この骨棘により痛みが強くなるものもあります。
また、一度作られた骨棘は消える事はありませんが痛みは消えることがほとんどです。
注)骨棘(こつきょく):骨がトゲ状に生えた状態
踵以外では足裏の指の付け根部分に足底腱膜炎の痛みが出ます。こちらは少数な上、モートン病や坐骨神経痛での痛みと間違えやすいため見極めが重要です。
足底腱膜炎の原因
足底腱膜炎の原因には次のようなものがあります。
- 急なランニング (ウォーキング)
- 体重増加
- 扁平足
- 加齢 (老化)
- 立ち仕事
- 靴
1.急なランニング
足底腱膜炎の原因で多いのがダイエットや運動不足解消の目的で急にランニングやウォーキングを始めた場合です。
日頃の運動不足で足のアーチを作る関節が硬くなり足底腱膜も柔軟性が悪くなっています。
足底 (足の裏) の皮膚や骨膜なども急なランニングなどの刺激で炎症を起こしやすくなります。
そのため、ウォーキングやランニングを始める際はいきなり頑張り過ぎないようにして短い時間で 短距離から体を慣らしていきましょう。
ランニングでは「蹴り過ぎ」が足底腱膜炎の原因になる場合があります。
踵から着地して指先で地面を蹴るフォームを見直して、足の土踏まず辺りで着地する走り方(ミッドフット走法)を意識すると負担が少なくなります。
2.体重増加
ランニングやウォーキングを始めた訳でもなく、足底腱膜炎の症状が出た場合は体重増加が考えられます。
腰痛や膝 (ひざ) 痛も急に体重が増えると発症しやすくなりますが、足底腱膜炎に対しても体重増加はかなりの影響があります。
3.扁平足
扁平足 (へんぺいそく) は足の「土踏まず」が無く足の裏が平坦になっている状態です。
土踏まずは8才頃までに形成されますが、それまでに土踏まずが作られないものを「扁平足」と呼びます。
扁平足になると地面からの衝撃を緩和させる足のアーチが無いため、ひざや足の関節や足底腱膜に強いストレスがかかります。
4.加齢 (老化)
加齢により筋肉や腱の組織が硬くなり痛め易くなります。そのため足底腱膜自体に亀裂が入ったり微小な傷が付く事で歩行時に足底腱膜の痛みが出ます。
また、足のアーチ構造が加齢による筋力低下などで平坦となってくることで、やはり足底腱膜炎を発症しやすくなります。
5.立ち仕事
長時間立っていると足裏の血流が悪くなり踵への圧力が持続する事で足底腱膜炎を発症しやすくなります。
立ち仕事の場合、両足に痛みが出る事が多くなります。
6.靴
クッション性の悪い靴や踵の磨り減った靴は足底腱膜炎を発症しやすくなります。
特に長距離を歩く時や早朝など足が冷えた状態で駆け足を行うと靴によっては非常に痛めやすくなります。
踵に痛みが現れた際はヒール、革靴、ブーツなどは避けるようにしましょう。
足底腱膜炎かどうかを調べるには?
足底腱膜炎かどうかは症状で判断できます。レントゲン上はトゲ状の骨である骨棘 (こつきょく) が形成された場合、踵に骨の突起が見られます。
つまり通常はレントゲンには写らない踵の痛みが足底腱膜炎と言えます。
通常の確認方法は歩き出しの踵または指の付け根の痛みです。その他、踵を指で強く押すと強く痛む箇所があります。特に踵の内側の場合がほとんどです。
足底腱膜炎の治し方
足底腱膜炎は数週間から数ヶ月以上続くものまで様々です。特に足底腱膜自体に亀裂などの傷がある場合は、そこに力がかかる度に痛みが長期に渡ります。
ただし、骨棘があろうと亀裂があろうと痛みの大半は消えます。全く消えないものはほとんど無いので、諦めずにしっかりと治していきましょう。
足底腱膜炎の治療法
- 足首を柔らかくする
- インソール (ヒールパッド)
- マッサージ
- ステロイド注射
- 体外衝撃波
1.足首を柔らかくする
足首は足の土踏まずのようなアーチと共に地面からの衝撃を緩和させるクッションの役割があります。
そのため足首が硬い事は地面からの力を逃す事が出来ないことになり、足のアーチに負担が集中してしまいます。
足首はふくらはぎやスネの筋肉が硬いと動きが悪くなります。そこで日頃からストレッチで柔軟性をつけるようにします。
2.インソール (ヒールパッド)
足底腱膜炎に効果的なものがインソールやヒールパッドによる踵の保護です。
特にクッション性の高いインソールやヒールパッドは歩行時の痛みを半減し踵への刺激を軽減させる事が出来るので痛みの緩和と回復の促進を同時に行うことができます。
家の中での使用はできませんが、靴を履いて歩行する時の刺激が大半を占めるため非常に効果が高い治療法です。
3.マッサージ
足底腱膜自体を緩める事で足の指から踵に伝わる牽引力を大きく軽減させる事ができます。
さらにふくらはぎや足のスネを緩め足首の動きを良くする事で足底腱膜への強いストレスを緩和する事が可能です。
マッサージを行う際は必ず足首を背伸びの形に伸ばし、足の指を曲げて足底腱膜を弛緩(ゆるめた)させた状態で行います。
そのほか、足の指をストレッチして足底腱膜に柔軟性をつけると再発防止にもなります。
4.ステロイド注射
痛みが強い足底腱膜炎やすぐに痛みを止めたい場合、即効性のあるステロイド注射が行われます。
炎症反応を抑えるステロイドは上手くいけば瞬時に痛みが治まるものもありますが、腱鞘炎と同じく短時間で再び痛みを感じることも多く、また使用回数も制限されるため試しにやってみるという選択肢が採られます。
5.体外衝撃波
近年保険適応となった治療法です。腎結石などの治療に用いる衝撃波を踵に応用し難治性の足底腱膜炎の治療に利用されるようになりました。
現在、体外衝撃波の一度の治療時間は30分程度で少し痛みを感じる程度です。
この治療法は保存療法で痛みが消えないものに限り使用され、治癒率は70%前後と高いです。これは難治性の中での治癒率なので最終手段としての選択ができたことは喜ばしいことです。