足がつるとは?こむら返りの原因と治療法
有痛性筋痙攣 (ゆうつうせいきんけいれん) いわゆる「足がつる」状態は、ほとんどの方が一度は経験した事があるかと思います。
つまりは筋肉が痙攣 (けいれん) する事ですね!
年配の方は「こむら返り」とよく表現されます。 (関西方面はコブラ返りのようです)
この「つる」場所は大半はふくらはぎですが、「つる」という状態は体中の筋肉ならどこでも起こる現象で、特に多い所は太ももの裏、ふくらはぎといった足の裏側の筋肉です。
その他背中やお腹、指などあらゆる所がツリますが、今回は一部の少数な疾患から起こるものを除き、全年齢を通して頻発する「ふくらはぎ」について詳しく見て行きます。
ふくらはぎがつる原因は?
まず「つる」とはどういう状態なのか?それは、筋肉に力を入れていない状態でもちぎれそうなほど突っ張る状態を言います。
見た目にも筋肉が硬く引きつるために浮き出て見えます。さらにほとんどが関節を曲げる筋肉に発生します。
ふくらはぎの筋肉がつる原因はいろいろありますが、よく耳にする一般的なものも含めて次のようになります。
- 電解質が不足している
- 下肢静脈瘤がある
- 水分不足になっている
- 冷え
- 坐骨神経痛がある (非常に多い)
1. 電解質が不足している
電解質とは、「こむらがえり」に関してカルシウムやマグネシウムを指します。
これらは筋肉の興奮を調節したり、神経の伝達をスムーズにする働きがあります。
この事から電解質が不足すると筋肉が痙攣 (けいれん) しやすくなります。
2. 下肢静脈瘤がある
下肢静脈瘤 (かしじょうみゃくりゅう) とは通常、静脈には血液の逆流を防ぐ弁が付いています。
この弁が立ち仕事や加齢などで壊れてしまい、静脈内の血液が滞ったり逆流したりします。
そのため足のふくらはぎ部分の血管が、立っている時に膨れてミミズのように見えます。
ふくらはぎの静脈の弁が壊れ下肢静脈瘤になると、足のダルさ、痛み、ふくらはぎが「つる」など「坐骨神経痛」に似た症状が出ます。
3. 水分不足になっている
水分不足 (脱水) 状態は非常に筋肉がつりやすくなります。
特に寝ている間は季節にもよりますが、かなりの汗をかいていて水分不足の状態になりがちです。
水分不足が原因の場合、両側の足に症状が出る事が多いので水分をなるべく取るようにしましょう。
ちなみに脱水状態はひどくなると全身の筋肉が引きつり相当な痛みを伴う事もあります。
体系や気温などにもよりますが水分は1日に通常、食べ物から1200ml、飲み物から1200mlの合計2400ml摂取しています。
逆に体から出る手段は尿から1200ml、不感蒸泄 (ふかんじょうせつ / 皮膚や呼吸から失う水分) が1200mlで合わせて2400mlです。
4. 冷え
体が冷えると血流不足から筋肉へ神経の伝達が鈍り硬くなります。
ふくらはぎは寝ている間に圧迫されて血流不足になりやすく、冷えやすいので特につりやすくなります。
5. 坐骨神経痛がある
坐骨神経痛 (ざこつしんけいつう) という言葉を聞いた事がある方は多いと思います。
足を動かしたり刺激を感じたりする神経は腰から出てきます。
腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など、この坐骨神経を圧迫する疾患があると足の「つり」は頻発します。
実はこの坐骨神経痛からのふくらはぎの「つる」症状が圧倒的に多くまた、気づかれていないケースが非常に多いです。
腰で神経を圧迫していると、神経の伝達が鈍り (又は過剰になり) 寝返りや足首を伸ばしたり曲げたりするとすぐにツルようになります。
また、座っている時や寝ているときにお尻が椅子やベッドで圧迫されますが、ここには足へ行く神経、血管があるため坐骨神経痛があるとより「つり」やすくなります。
この「つる」状態はよく脱水などの水分不足と思われていますが、実際は坐骨神経からの方が圧倒的に多くなります。
足がつる時は坐骨神経痛 (痛み以外のしびれだけのものものを含めて) の症状がある片側の足のみ頻発する事でも分かります。
この状態では、いくら水分を補給しようとビタミンやミネラルを摂ろうと足はつります。
体勢を変えようとしたり足の指をグー、パーするだけでも頻繁につるようになります。
特に注意が必要なもの
足が「つる」原因として先述したもの以外に下記のような病的な場合もあります。
糖尿病 (DM)
糖尿病 (とうにょうびょう) は身近によく聞く病名です。現在患者数は360万人に上り、予備軍を含めると2000万人とも言われています。
摂取した糖質は肝臓を通るとブドウ糖になり、膵臓で作られたインスリンが血管から細胞へブドウ糖を移動させる役割があります。
この事から糖尿病はインスリンが出なくなり血管の中に糖が残ってしまう病気で、神経障害、血流障害などの原因となります。
そのため糖尿病になるとふくらはぎの動脈硬化や神経障害のため、こむら返りが起こりやすいと言われています。
閉塞性動脈硬化症 (ASO)
閉塞性動脈硬化症 (へいそくせいどうみゃくこうかしょう) は喫煙や糖尿病などを原因として全身の動脈が詰まる病気です。
動脈が詰まるため、足のしびれやこむら返りの症状が出る事が多く、特徴的なものでは足の冷感や蒼白 (そうはく / 皮膚が青白っぽくなること) が現れます。
閉塞性動脈硬化症についてはこちら ⬇︎
こむらがえりの治し方は?
一時的に治す方法
坐骨神経の圧迫からつる場合
「ふくらはぎ」がつった場合、どのように治せばいいのでしょうか?これはスポーツをしていた方ならほとんど知っているかと思います。
ふくらはぎがつった状態では足首が足の裏の方へ伸ばされて筋肉が硬く引きつります。
この状態と逆にすれば瞬時に治ります。つまり足首を手前に強く手で反らします。
この時に膝は出来るだけ伸ばして、足の指ごと強く反らすのがポイントです。
この時に足の力だけで足首を反らしても治らないため必ず手を使って反らします。
ただし、つっている状態の筋肉は伸ばす時にかなりの抵抗があります。
この抵抗に逆らって強く足首を反らす必要がありますが、多くは寝ている状態で発生するためなかなか高齢者の方には難しいようです。
そこで高齢者にも簡単な治し方を次に挙げます。
それは 立って足踏みをする事 です。
手で治せない場合や伸ばして治してもすぐまた「つる」等の時にこれはかなりオススメの方法です。
立ち上がることで体重が足首をストレッチする方向に働き、結果ふくらはぎが伸ばされて治ります。
さらに圧迫されていたお尻を通ってる血管や神経が解放され、神経を圧迫している腰骨の位置や角度が安定します。
サポーターで圧迫する方法
夜寝ている時や朝方に頻繁にふくらはぎが「つる」場合はサポーターが有効です。
サポーターは保温用のものではなく、少し圧迫気味の物の方がつり防止には効果があります。
もちろん保温用のものは冷えを防止する事で効果的ですが、この場合は筋肉の圧迫が目的となります。
この方法は手軽な上、ふくらはぎが「つる」回数が減少した方が多いので、もし頻繁にふくらはぎが「つる」方は一度サポーターを試されると良いかと思います。
薬剤を使用する場合
ツムラの漢方薬68番、芍薬甘草湯 (しゃくやくかんぞうとう) は比較的処方される方が多いかと思います。
芍薬甘草湯は10分ほどで効果が出る比較的即効性の漢方薬ですが、この成分の甘草 (かんそう) による高血圧や高K血漿の偽アルドステロン症を発症する事があり、だるさや不整脈等の副作用がまれにあります。
根本から治す方法
上記のような治し方は対処療法であり、もちろん原因から治るわけではありません。そのため今後も「こむら返り」は繰り返してしまいます。
ではこむらがえりを根本から治す方法はどうすれば良いのでしょう?
坐骨神経から起こる場合
腰の疾患から起こる坐骨神経の症状の場合、腰の状態を改善する事でこむら返りが発症しなくなります。
この場合、必ずしも腰の痛みは伴わず、足のしびれやだるさ等の症状があれば坐骨神経から来るふくらはぎの「つり」を疑います。
坐骨神経痛では特にお尻やスネの横に痛みやだるさが出ることが多く、神経痛があるかどうかの一つの目安になります。
その他、長い距離を歩くと足が棒のようになったりしびれてきたりする事もあります。
坐骨神経痛の原因となるものは次のような疾患があります。
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰部脊柱管狭窄症
- 梨状筋症候群
- 腰椎分離すべり症
これらの疾患による坐骨神経痛を改善する事でこむら返りが改善します。
それぞれの疾患の詳細はこちら ⬇︎
腰椎椎間板ヘルニア / 腰の痛み 足のしびれ
腰部脊柱管狭窄症 / 腰の痛み 足のしびれ
梨状筋症候群 / 足のしびれ・お尻の痛み
腰椎分離すべり症 / 腰の痛み・足のしびれ
下肢静脈瘤から起こる場合
下肢静脈瘤からふくらはぎが「つる」場合には静脈瘤の治療が必要です。
静脈瘤は静脈にある逆流防止弁が壊れて血液が血管内に溜まってしまうものです。
静脈瘤が進行すると歩く際に足が痛くなる、ふくらはぎがつる等の坐骨神経痛に似た症状が現れます。
この逆流防止弁は一度壊れてしまうと自然に治ることはありません。そのため手術を行う必要があります。
手術ではこの壊れた弁を再生する事は現在出来ないため、血管ごと切り取ってしまうか、血管内をレーザーで焼き潰して血流を止めます。
血液は他のバイパス血管へ流れるので問題ありません。
まとめ
足が「つる」いわゆるこむら返りは歳だからしょうがないと思っている方も多いかと思います。
こむら返りはその多くが坐骨神経の圧迫により伝達が悪くなっている足に頻発します。
坐骨神経痛の原因となる疾患は治療が難しいものも多いですが、腰の状態が少しでも改善すれば「つる」回数を減らす事ができます。
水分補給はもちろん、足を冷やさない、電解質を摂るなどできることをしてみて、それでも「つる」ようであれば腰を労ってあげると良いかと思います。