肩峰下滑液包炎
けんぽうかかつえきほうえん
肩峰下滑液包炎とは、腕の付け根にある袋が炎症を起こし肩に痛みが出ることです。
名前は聞きなれないものですが五十肩と同じく多く発生する疾患です。
症状
肩が痛む、だるい、腕を動かすと痛むなどの運動痛、夜間痛などの症状が出ます。
特に有痛弧 (ゆうつうこ) と言って腕を横に挙げた際、50°〜120°の間でこの滑液包へ最も圧力がかかるため痛みを感じます。
これとは逆に腕を後ろに挙げて背中へ回すと滑液包への圧力が減り痛みが軽減します。
肩峰下滑液包炎と似た肩の痛みは多いため鑑別が必要です。
病態
肩峰下滑液包は肩甲骨の肩峰 (けんぼう) の真下にある滑液 (かつえき) を含んだ袋状の部分です。
出典 : 整形外科シリーズ 5
滑液包は肩にある狭い隙間の部分を筋肉や骨が動いた時に生じる摩擦から守ります。もし滑液包が無ければ組織同士が擦れて炎症や断裂が起きてしまいます。
滑液包は肩峰下滑液包以外にも肩に多く存在して肩のそれぞれの動きを滑らかにしてくれています。
この滑液包は位置的にも挟まれやすい状態にあり、腕の動きにより衝突や圧迫を常に受けています。そのため、炎症を起こしやすく滑液が増えたり滑液を包んでいる滑液包が肥厚して痛みが現れます。
原因
中年以降に多いことから、加齢により肩の筋肉が集まり上腕骨に付く腱板部の空間が狭くなり、滑液包が圧迫されやすくなり発症することが考えられます。
他にスポーツなど腕を上げる動作の繰り返しで滑液包にインピンジメント (衝突) が起き、滑液包が炎症を起こします。
治療法
肩峰下滑液包炎の治療法はまず滑液包に圧力や刺激の原因となっている明らかなスポーツや日常生活動作があればそれらを改善、中止することが必要です。
急性期の治療法
保存療法
痛みが出始めて3日〜1週間程は急性期のため温めたり動かしたりせずに安静を保ちます。急性期の炎症が落ち着く事で痛みが急に楽になることがあります。
急性期に温めたり運動して治そうとすると炎症がひどくなるので注意が必要です。
急性期を過ぎた1週間目程度からは温熱や超音波治療などの物理療法や軽度な運動療法から始めて肩関節の拘縮予防と可動域の改善を行います。
薬剤での治療
急性期の肩の痛みに対して薬剤での治療が行われます。初期には関節包内にステロイドやステロイドと麻酔剤を混ぜたものを注射します。主に注射で痛みや炎症を止めますが、2〜3日でまた痛みを感じる事があるため月に数回行うことで痛みの経過を見ます。