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腱板損傷 / 肩の痛み・ 腕が上がらない

腱板損傷

けんばんそんしょう

腱板損傷 ( 腱板断裂 ) とは肩関節の中にある腱板と呼ばれる部分を痛めることで、肩の痛みや腕が上がらなくなる疾患です。肩腱板損傷、肩腱板断裂とも言います。

一般的に肩腱板を「ローテーターカフ」とも言います。この腱板損傷はよく起こる身近な疾患です。

原因

腱板損傷 ( 断裂 ) は急性になるものと加齢からなるものがあります。比較的男性に多く40歳代から増加します。また、肩を酷使するスポーツでも多く発症します。


出典 : 日本整形外科学会 「整形外科シリーズ 16」

腱板損傷の多いスポーツ

  • 野球
  • バレーボール
  • テニス
  • バスケットボール
  • バドミントン
  • 水泳   など

このように腕を上に挙げる動作が多いスポーツに多発するという事が分かります。特に野球をしていた方で肩の痛みが数年経っても残っている場合、腱板損傷の後遺症である可能性が非常に高いです。

腱板はその位置と構造上、肩甲骨と上腕骨に挟まれたり擦れたりして圧迫や摩擦を繰り返します。そのため徐々に腱板が擦り切れてきます。

加齢からなる断裂

腱板は上記のスポーツ以外でも日常生活で常に擦れるような外力が多くかかります。そのため、特に高齢者では明らかな原因がなくても骨の変形や関節の狭小化により腱板が断裂する事も多くあります。

加齢からなる断裂の場合は突然に腕が上まで挙がらない状態となります。この断裂では痛みがそれほど強くない事も多く、そのまま生活される方もいます。


病態

肩周りには多くの筋肉があります。その中でもインナーマッスルである棘上 (きょくじょう) 筋棘下 (きょくか) 筋小円 (しょうえん) 筋肩甲下 (けんこうか) 筋の4つの筋肉が集まって腱の集合体である「腱板」を形成します。

各筋肉の作用は次の通りです。

筋肉名 作用 説明
棘上筋 外転 腕を横から上に挙げる
棘下筋 外旋 腕を外側に捻る
小円筋 外旋 腕を外側に捻る
肩甲下筋 内旋 腕を内側に捻る

腱板はちょうど上腕骨の付け根を手で包み込むように覆っていて、腕を動かしたり上腕骨の安定にも関与しています。

腱板損傷には完全に切れた完全断裂と腱板の一部分が裂けた部分断裂があります。腱板を構成している4つの筋肉で構造上、最も損傷しやすいのが棘上筋 ( きょくじょうきん) です。

棘上筋は1番上方に位置して腕を持ち上げる作用があるため、肩峰下腔 ( けんぽうかくう ) という狭い隙間を通る構造上、擦れたり挟まれる事で損傷しやすくなっています。

CHECK !

腕を上に挙げた際、肩に鋭い「ツン」とした痛みが出る症状を衝突という意味から「インピンジメント症候群」と呼びます。

インピンジメント症候群 / 肩の痛み

症状

運動痛、運動障害などの肩を動かす際に痛みが出ます。特に夜間痛が強い事があり五十肩との見分けが必要です。

注意

五十肩の他に慢性治癒した肩鎖関節脱臼や石灰沈着性腱板炎とも鑑別が必要です。

また、一度部分断裂した箇所は元に戻らないため、肩を動かす角度により感じる痛みが何年も続く事があります。

完全断裂では腕が上がらないため、肩をすくめて体を斜めにして上げるようになります。さらに腕を動かす角度によりギシギシした雑音を感じる事が多いです。

検査法

腱板損傷の検査法には大きく分けて次の3つがあります。

  1. 徒手検査
  2. レントゲン検査
  3. MRI検査

腱板の完全断裂では背中側の筋肉 (棘下筋) や腕が上がらないため肩の付け根の三角筋も痩せてきます。腕を上に挙げようとすると肘を曲げて肩をすくめるので見た目にも完全断裂は容易に判断できます。

しかし先述の腱板を構成している4つの筋肉である棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋のどの筋肉の腱に異常があるかを見極める必要があります。

特に腱板の部分断裂では腕は上がるが痛みが出るという状態なので、どの動きで痛みが出るのかが分かれば痛めた筋肉の腱を特定する事ができます。これらの特定には
徒手検査

が有効になってきます。

1.徒手検査

徒手検査では見分けやすいように次の5つの状態に分けてみました。

  • 棘上筋の検査法
  • 棘下筋の検査法
  • 小円筋の検査法
  • 肩甲下筋の検査法
  • インピンジメント症候群の検査法
棘上筋の検査法
ペインフルアークサイン (有痛弧症状)

立った状態で痛い方の腕を肘を伸ばしたまま横 (側方) から上に挙げていきます。

1番上で180°上がった状態ですが、上に挙げる過程の60°〜120°の間に肩に痛みが出るかどうかを見ます。

この間での痛みは腱板損傷の可能性が高くなります。


Drop arm test (ドロップアームテスト)

腱板損傷の検査で腱板が完全断裂しているかどうかを調べる方法にドロップアームテストがあります

ドロップアームテストとは、誰かに腕を横に挙げてもらいます。その位置で手を離されると、腕を横に開いた位置で耐える事が出来ずに手が落ちてしまいます。


外転抵抗テスト

腱板の完全断裂症状が見られなくても、ドロップアームテストの要領で腕を横に上げます。

その腕に上から抵抗を加えると肩の付け根に痛みが出る場合、腱板の部分断裂の可能性が高くなります。
外転 (がいてん) : 腕を横に上げること。


Full can テスト

座った状態で肘を伸ばしたまま腕を前に上げます。この時、手の甲が上に来るようにします。

もう1人がその腕を握って固定し動かないようにします。

固定された力に抵抗して手のひらが上に向くように強く腕を外側に捻ります。

この時に肩に痛みや引っかかり音が出るようなら棘上筋損傷を疑います。

棘下筋の検査法
Empty can テスト

座った状態で肘を伸ばしたまま腕を前に上げます。この時、手のひらが上に来るようにします。

もう1人がその腕を握って固定し動かないようにします。

固定された力に抵抗して手の甲が上に向くように強く腕を内側に捻ります。

この時に肩に痛みや引っかかり音が出るようなら棘下筋損傷を疑います。


外旋筋力テスト

痛みのある腕を下げた状態から肘を直角に曲げます (小さく前にならえの形) 。

必ず肘を脇腹に付けた状態のままもう1人の人が手首と前腕部を抑えて固定します。

これに抵抗して肘を体の脇に付けたまま外側に開きます。

この力が弱いものや痛みが出る場合、棘下筋損傷を疑います。

小円筋の検査法
Hornblower’s テスト (ホーンブローアーズ)

座った状態で痛い側の腕を手の甲を上にして横に水平に上げます。

そのまま肘を90°曲げます。この時に指先は前を向いています。

他の人が手首の辺りを抑えて固定してもらった状態で肘から上は動かさずに手だけを抵抗して持ち上げます。

この時に肩に痛みが出るものは小円筋の損傷が考えられます。

肩甲下筋の検査法
Belly press テスト

痛みのある側の手をお腹に当てます。

その手で強くお腹を押していきます。

この時に肘が後ろ (背中側) へ下がってしまうようなら、肩甲下筋の損傷である可能性が高くなります。


Lift off テスト

痛い方の手を腰に当てます。この時に手の甲側を腰に当てます。

その手を腰から離すように後ろへ遠ざけていきます。

腰から手が離れた位置で保持できるかどうかを確認します。

もし手がまた腰に付いてしまうようであれば肩甲下筋の損傷が疑われます。

インピンジメント症候群の検査法
インピンジメント症候群は腱板損傷があれば陽性(痛み)反応が出ます。腱板損傷の大体の有無を知ることができます。
インピンジメント : 衝突のこと。

Neer テスト

立った状態て痛みのある側の腕を内側に捻ります。

内側に捻った状態のままその腕を肘を曲げずに前に上げていきます。(この状態で上腕骨の大結節という突起が腱板を圧迫します)

この時に肩の痛みを感じればインピンジメント症候群の可能性が高くなります。


Hawkins テスト

座った状態で痛い側の腕を真っ直ぐ前に上げます。

その状態で肘を直角に曲げます。指先は上を向いている状態です。

もう1人の人がその手首を持って内側に腕を倒していきます。この時に肩に痛みが出れば陽性となります。

2.レントゲン検査

腱板自体はレントゲンでは写らないため、関節の隙間の開き具合や骨棘などの関節の変形から腱板損傷を推測します。

3.MRI検査

確定診断になります。MRIでは腱板自体を確認する事が可能なため、部分断裂か完全断裂かも含めて確認します。

治療法

腱板損傷の治療では
保存療法

が行われます。しかし腱板の完全断裂の場合には観血療法 (手術) しか治す方法はありません。

注意

加齢からなる腱板断裂ではそのまま放置する人も多いですが、肩関節自体が変形してくる危険があるため注意が必要です。

保存療法 ( 手術以外の治療 )

保存療法では一度部分断裂した腱板は元に戻らないため、痛みを取り除く方法が採られます。

腱板損傷における保存療法の基本は安静です。肩の炎症が収まるだけでもほとんど痛みを感じなくなることがあります。ただ、数年に渡って痛みが続いているものには薬剤や運動療法の選択となります。

薬物療法

注射ではステロイド局所麻酔剤、ヒアルロンなどが使用されます。炎症が止まることによって痛みが軽快するものもあります。

運動療法

運動療法は腱板損傷に有効なものもありますが、痛んだ腱板に負担がかかりすぎる運動は逆効果となるため注意が必要です。

また、腱板を構成している棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋はインナーマッスルという深部の筋肉で、アウターマッスルと比較して小さく繊細な動きを担っています。そのため、過度な負荷でのトレーニングは避ける事が必要です。

腱板損傷では痛めた状態や痛みの角度、範囲が様々ですので、ここでは一例だけ挙げてみます。

腱板損傷の中で最も頻度が高い棘上筋腱の損傷では、チューブを使ったリハビリが比較的安全性が高いです。

棘上筋の動きをカバーできるのはアウターマッスルの三角筋です。三角筋は腕を外側へ水平まで上げる作用があるため、この範囲での筋肉トレーニングを行い痛めた棘上筋の代用を行わせます。

足を肩幅に開いて立ち、痛みのある側の足でチューブの先端を踏みます。

もう一方のチューブの先端を痛みのある側の手で掴み、チューブがたるまなくなるように手首に巻きつけます。

この状態で腕を横に開いていきます。水平までを上限とし、チューブの張り具合を調整しながらゆっくり数回繰り返します。

この他、肩甲骨周りのストレッチをして肩甲骨の動きを良くする事でも痛みの改善になります。

観血療法 ( 手術による治療 )

石灰沈着性腱板炎のように腱板の亀裂が入った位置に石灰が沈着するものがあります。これは石灰が腱の一部になっていて、取り除くと腱板の不安定性が増してしまうため、手術で石灰を一部残して取り除く方法が採られます。

これまでの腱板の手術では皮膚を切開して筋肉を剥がした上で腱板の縫合などを行なっていましたが、現在では体への侵襲が少ない関節鏡が主流になりつつあります。

手術後は4週間は固定し、その後はリハビリとなるため回復には3ヶ月以上は必要になります。

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徒手検査(としゅけんさ)

MRIなどの機械や採血の検査ではなく、体に直接触れてその反応で症状を判断する検査。

叩く、押す抵抗を加えるなどで症状の原因を即座に特定する時に用います。

注) 筋肉の筋力を測る徒手筋力検査とは異なります。

保存療法 (ほぞんりょうほう)

手術以外の治療のこと。

⇔ 観血療法