閉塞性動脈硬化症 ( ASO )
へいそくせいどうみゃくこうかしょう
閉塞性動脈硬化症 (以下ASO) は動脈硬化により手足の血流が悪くなり、手や足のしびれ、冷えなど様々な症状が現れる疾患です。
ASOの症状
ASOの症状は
動脈硬化
により手足(特に足)が血流不足となるため、痛みやしびれ、潰瘍などの症状が現れます。
また、動脈が閉塞するため手足の脈がほぼ消失します。
画像 : 動脈硬化への流れ。粥状効果。
ASOの分類にはフォンテインの分類が用いられます。
Fontaine分類(フォンテイン分類)
1度 | 軽度虚血 | 手足の冷え、シビレ。手足の指が青白い。 |
2度 | 中等度虚血 | 一定の距離を歩くと痛みのため歩行できなくなる(間欠性跛行)。腰部脊柱管狭窄症との鑑別が必要。 |
3度 | 高度虚血 | 安静時疼痛。夜間痛。刺すような痛みが持続する。 |
4度 | 重度虚血 | 手足の壊死や皮膚に治らない潰瘍ができる。 |
ASOでは上記のような手足の症状の他に、全身の動脈硬化が見られることがあります。
重要なものに心臓自体を栄養する血管である冠動脈(かんどうみゃく)の疾患や脳血管障害が3割前後で合併しています。
重度のものでは足の指が壊疽してしまします。糖尿病からの指先の壊疽では痛みを全く感じませんが、ASOの場合は激痛となります。
・壊疽(えそ):腐る事。
ASOになる原因
中年以降の男性に多く、動脈の血流を阻害するような以下の原因があります。
- 糖尿病
- 喫煙
- 高血圧
- 高脂血症
- 肥満
動脈硬化は主に生活習慣に起因する病気や食生活により発症します。
閉塞性動脈硬化症と同じく手や足の痺れが出る疾患との鑑別が重要です。特にバージャ病は動脈が硬くなり内腔が狭くなる点でASOと共通しています。
ただしASOが50〜60歳代より増加するのに対しバージャー病は比較的年齢が若く、喫煙者が9割を占めます。
腰部脊柱管狭窄症では動脈の影響が無いため下肢の脈は消失しません。
腰部脊柱管狭窄症 / 腰の痛み 足のしびれ バージャ病 (ビュルガー病) / 手足のしびれ、血流障害
ASOの検査法
閉塞性動脈硬化症の検査には足の甲やくるぶしの後ろなど脈拍を触診する事で大まかに血管が閉塞しているかどうかの見当をつける事ができます。
その他、足のしびれや蒼白、冷感などが確認できればASOを疑い、次のような検査で確認されます。
- 足関節上腕血圧比(ABI)
- 超音波ドップラー検査
- 動脈造影検査
- 運動負荷試験
1.足関節上腕血圧比 (ABI)
足関節部の収縮期血圧を上腕部の収縮期血圧で割ったもの。1.0以上は正常で0.9以下数字が下がるほど重症となり、動脈の閉塞が疑われます。
0.6以下で間欠性跛行 (かんけつせいはこう) が見られます。
間欠性跛行とは、歩いていると血流や神経痛の影響で足が止まってしまい、少し休むとまた歩き出せるようになる事です。
2.超音波ドップラー検査
ASOの診断でよく利用され、超音波エコーで血管病変を検査します。
3.動脈造影検査
CT検査で血管造影を行い動脈の閉塞を調べます。またMRIでの検査では造影剤が必要ないため、アレルギーや慢性腎不全の方にも行う事ができます。
4.運動負荷試験
トレッドミル (ランニングマシン) を用いて歩行を行い、速さや勾配など負荷をかけた際の症状の表れ方を調べる検査です。
ASOの治療法
閉塞性動脈硬化症の治療では原因となる生活習慣から見直します。さらに血流を改善する様々な方法が採られます。
比較的予後は良好ですが、合併症で死亡するケースがあります。
ASOの主な治療法
- 禁煙
- 運動療法
- 薬物療法
- カテーテル治療
- レーザー血管形成術
- 血管バイパス手術
- 血管新生療法
1.禁煙
動脈硬化の原因のひとつに喫煙があります。喫煙は末梢 (手や足の先端) 血管が収縮し血流を悪くします。そのため喫煙者は禁煙をする事が治療上、重要です。
2.運動療法
生活習慣病の改善に運動が効果的です。特にウォーキングは安全に全身の血流を良くし、血行が改善される事で症状の緩和が望めます。
3.薬物療法
血管拡張薬や血液をサラサラにする抗血小板薬が使用されます。
4.カテーテル治療
動脈に細い管を入れて狭くなった血管を膨らませたり、ステント (血管を広げる金網状のもの) を血管内に留置して血流を改善します。
5.レーザー血管形成術
カテーテルの先端から出るエキシマレーザーを照射して比較的安全に閉塞した血管を開通させる事ができます。
6.血管バイパス手術
人工血管や他の部分から取ってきた血管を詰まった血管部分のバイパスとして移植し血流を改善する方法です。
7.血管新生療法
血管新生の促進ために造血幹細胞移植やホルモン療法が行われています。
閉塞性動脈硬化症は早期に適切な治療を行えば予後は比較的良好ですが、重度のものになると末梢の血流の改善が困難となり、足の切断や心疾患、脳血管障害を引き起こし、命に関わるため注意すべき疾患です。