ヒビと骨折は何が違うのか?
骨折は「骨が折れる」と言うことはよくご存知かと思います。では「ヒビ」とは何でしょうか?
骨折の種類
骨折には大きく分けて「完全骨折」と「不全骨折」があります。
不全骨折 (ふぜんこっせつ) とはいわゆるヒビの事で「完全骨折」「不全骨折」はどちらも骨折となります。つまりヒビも骨折なのです。
不全骨折の種類を細かく見ると亀裂骨折(きれつこっせつ)という骨折があり、これが一般的には「ヒビ」と呼ばれています。
その他、ここでは割愛しますが骨折にはその折れ方により横骨折、剥離骨折、斜骨折、圧迫骨折、螺旋骨折など多くの呼び方があります。
複雑骨折について
さらに骨折で間違った言い方をされているものに「複雑骨折(ふくざつこっせつ)」があります。
複雑骨折はその呼び方のせいで一般的には「複雑に折れた骨折」という意味で使われてしまっています。
正確には複雑に折れた骨折を「複数骨折」と言います。また相当細かく折れたものは「粉砕骨折」と呼ばれます。
それでは「複雑骨折」とはどういう骨折でしょうか?
複雑骨折は「外界と交通したもの」と言われますが、分かりやすく言えば骨折した骨が皮膚を突き破り外に飛び出た(又は骨が皮膚の下に見えてしまっている)ものを複雑骨折と呼びます。
複雑骨折のように骨が見えている状態は菌による感染が起こり非常に危険な状態となります。
また、複雑骨折は開放性骨折(かいほうせいこっせつ)とも呼ばれます。以上のようにまさに「複雑」ですね!
ヒビの勘違い
実際にヒビに関してよくある質問や勘違いが多い部分を挙げてみます。
ヒビは骨折じゃないよね?
ヒビは骨同士がズレていないだけで骨折です。また、ズレていない骨折を不全骨折と呼びます。
普通の骨折よりヒビの方が治るのが遅いんでしょ?
ヒビ (不全骨折) は骨同士がズレていないため通常の骨折よりもむしろ治りやすいです。
ヒビは放っておけば治るの?
ヒビは骨同士がズレていないだけで動かしていると骨折した部分がズレてしまい完全骨折となり骨が付かなくなります。
これらは実際にある「ヒビ」について多くの方が認識してしまっている勘違いです。
ヒビは大半が手術を必要とせず、その状態をしっかりと理解し確実な固定と安静を行うことで元通りに近く綺麗に治る骨折です。
ヒビが入っていると言われたら?
病院でレントゲンを撮ると「骨にヒビがありますね」と言われることがあります。
このように診断された場合、ヒビもズレたら完全骨折になってしまったり、曲がって治ることもあるのでしっかりと患部の安静を保つ必要があります。
但しヒビや完全骨折には場所により固定すら必要としないものもあります。
例えば足の小指や下腿の腓骨(ひこつ)、肋骨などです。これらの多くは固定をする先生もいればしない先生もいます。
もちろん痛みが強い場合や仕事やスポーツなどで必要以上に動かさざる負えない場合などは固定をすることは多くなります。
通常、一般的なヒビ(不全骨折)には完全骨折同様にしっかりと固定をします。
また、骨同士が離れてしまった完全骨折は整復(骨を元の位置に戻す治療)を行うことでヒビと同じ状態に近づけます。
骨同士が接触していれば骨癒合(折れた骨が付くこと)が得られるからです。
ただし完全骨折でも不完全骨折(ヒビ)でも何かしらの理由で新たに骨が作られない(くっつかない)場合があります。
その場合は6か月経過すると偽関節(ぎかんせつ)という本来関節ではない骨折部分が動くように治ってしまいます。
つまり骨同士がくっつかない状態で治ってしまう状態です。
特に手の舟状骨(しゅうじょうこつ)は偽関節が多発する骨なので要注意です。
舟状骨について詳しくはこちら ⬇︎
偽関節となりそうな時は骨折した骨の断端を再度削り新しい骨を再生させる方法や、骨盤など体の他の部分の骨を骨折部に移植して治す方法などが行われます。
偽関節について詳しくはこちら ⬇︎
まとめ
ヒビは骨折で完全に骨同士が離れてしまった骨折よりも治りやすいことがお分かりいただけたと思います。
ヒビと診断されたら「骨はズレていませんよ」と言う事なので、落ち込まずにむしろ幸運と思ってもらえたらと思います。