肘部管症候群
ちゅうぶかんしょうこうぐん
肘部管症候群とは、神経が走行している肘の内側のトンネル部分が様々な原因で圧迫されて起こる手の筋肉の萎縮・手のしびれ・指のしびれです。
症状
発症の初期には薬指と小指がシビレてきます。指先の触った感覚も鈍いため比較的、気が付きやすいです。
神経が圧迫されている場合、肘の内側を指先でトントン叩くと指先まで電気が走るように響きます。(チネル徴候といいます)
症状が長期に及んだり、肘の神経の圧迫が強くなると手の甲全体が痩せて薬指の半分と小指がしびれます。
さらに小指側の手のひらの厚みが無くなり、薬指と小指が鷲(わし)の手のように曲がった状態となります(鷲手変形・かぎ爪変形)。
他にも手を広げて閉じる動きが困難になってきます。
原因
肘の内側には肘部管というトンネルがあります。
そのトンネルを小指と薬指に行く神経である尺骨(しゃっこつ)神経が通っています。
このトンネル(肘部管)が様々な原因で狭くなり、尺骨神経が圧迫されます。原因は主に次の4つです。
- 加齢による肘の変形
- 上腕骨顆上骨折
- ガングリオン
- 野球などのスポーツ
原因1.加齢による肘の変形
年齢を重ねるにつれて関節の形も少しずつ変形してきます。
肘の関節は生活習慣や職業、スポーツなどを長年繰り返すことで肘の肘部管のトンネルに骨棘(こつきょく・骨が出っ張ったトゲ状のもの)が出てくることがあり、この骨棘がトンネルを狭くして神経の圧迫が起こります。
原因2.上腕骨顆上骨折
上腕骨顆上骨折(じょうわんこつかじょうこっせつ)は、特に幼少期に上腕(肘のすぐ上)の骨折をすると、成長とともに骨の形が変わることがあります。
これは成長期に骨折した場所が骨がこれから伸びる成長線にかかり、不均衡に骨が伸びてしまい年齢が上がるにつれ肘が外側へ反っていきます。
これは手のひらを上に向けて肘を伸ばし、肘から下が外側へ曲がって見えることから外反肘(がいはんちゅう)と呼ばれます。
この外反肘は肘の内側を走る尺骨神経を圧迫し始め、骨折後数十年経ってから肘部管症候群を発症します。
遅れて発症することから遅発性尺骨神経麻痺と呼ばれます。
原因3.ガングリオン
ガングリオンは経験された方も多いと思いますが、関節の中から一部飛び出た透明なゼリー状のできものが手首や肘周辺に出てきます。
神経に当たっていなければ痛みが無いことが多く、注射器などで吸い出しても再発が多いため、自然に消えるまで放置している人も多いです。
このガングリオンが肘部管にできてしまうと、やはり尺骨神経を圧迫し肘部管症候群となり指のシビレなどを発症します。
原因4.野球などのスポーツ
野球では繰り返しの投球により肘の骨同士が衝突したり、肘の軟骨が剥がれたり、更に靭帯(骨同士をつないでいるヒモ)が肥厚するなどで肘部管を狭くし、尺骨神経を圧迫することがあります。
治療法
肘の運動を中止し、まず保存療法(手術以外の治療のこと。温めたり、電療など)・薬物療法をしばらく行い、改善が見られない場合は手術適応となります。
肘部管症候群は手の甲の筋萎縮や薬指・小指が曲がってしまう鷲指変形が見られるので、首からの神経症状と区別しましょう。
肘部管症候群は肘のトンネル内が狭くなって神経を圧迫しているので、多くは手術でトンネル内を広げることが必要となります。