突き指 (マレットフィンガー)
つきゆび(マレットフィンガー)
「突き指」はご存知のように指を衝いて痛める事です。
このうち、腱 (けん) の断裂や剥離骨折 (はくりこっせつ) を伴うものを「マレットフィンガー (槌指 / つちゆび) 」と言います。
- 腱 (けん) は、筋肉が細くひも状になって骨に付く部分です。
- 剥離骨折 (はくりこっせつ) は、腱や靭帯 (じんたい) が断裂しない代わりに骨を引っ張ることで骨の一部が剥がれてしまう骨折です。
ただし、この「突き指」は正式な疾患名(病名)ではありません。
突き指と呼ばれる指を突いて痛めたものは「捻挫」と言い、腱の断裂や剥離骨折しているものを「マレットフィンガー」と呼びます。
注) : マレットフィンガーは別名、槌指(つちゆび / ついし)・マレット変形・マレット指とも呼びます。
突き指の原因は?
つき指 (指の捻挫) やマレットフィンガーは転倒やバレーボール・バスケットボールなど球技のスポーツで、ボールなどへ指先から衝くことにより受傷する事が大多数を占めます。
突き指はほとんどの人が1度は経験する身近なケガです。
突き指とマレットフィンガーの症状
突き指
指先がボールや地面などと衝突することにより、指の関節の軟骨に傷が入ったり、関節を支える靭帯が断裂することもあります。
指には一般的に第1関節や第2関節などと呼ばれる関節がありますが、この関節の両側にはそれぞれ側副靭帯 (そくふくじんたい) と呼ばれる靭帯があります。
ほとんどの突き指では靭帯を損傷したとしても一部分だけの靭帯の断裂 (靭帯を伸ばした状態) にとどまります。
しかし完全にこの側副靭帯が切れた場合、指を伸ばしたまま横から力を加えると関節がグラグラと動揺するので、靭帯の部分断裂か完全断裂かは比較的容易に判別できます。
ちなみに靭帯 (じんたい) とは、関節部分にある骨と骨とを結ぶヒモです。靭帯がなければ関節はグラグラになってしまいます。
靭帯が断裂すると内出血が多くなり、腫れと痛みは強く日常生活に大きく支障をきたします。
靭帯の部分的な損傷の場合、関節の側面がホワッと赤く腫れ、数ヶ月間に渡って痛みと腫れが続くケースが非常に多く見られます。
この靭帯の部分断裂の場合は、完全には断裂していないため関節がグラグラと動くことはありません。
マレットフィンガー
ボールなどで指先を強く衝いた際、指の第1関節が曲がったまま伸びなくなります。
この指先が突き指で曲がった状態をマレット変形 (マレットフィンガー) と言います。
出典 : 手の外科シリーズ 6
マレットフィンガーになると、曲がった方の指をもう一方の手で伸ばしてあげると抵抗なく伸びますが、離すとまた指先が曲がってしまいます。
そのため、突き指をして指先がおじぎをするように曲がっていたら、マレットフィンガーの可能性が非常に高いです。
突き指をしても医療機関を受診せずにそのまま放置される方が多いですが、もしこのマレットフィンガーの症状があれば、放置すると一生そのまま指先が曲がって治らなくなってしまいます。
つまりマレットフィンガーの症状は、痛みと腫れが強く指の第1関節がおじぎをするように曲がり、放置すると曲がったまま治ゆしてしまいます。
突き指とマレットフィンガーの病態
突き指
いわゆる関節の捻挫で、指先からの衝撃により関節の軟骨に傷が付いたり、指の関節を支える靭帯が部分または完全断裂する事もあります。
靭帯の部分断裂とは、靭帯はコラーゲンの繊維からなる強靭な結合組織の「束」で作られているため、この束の何本かが部分的に断裂したものを言います。
また、靭帯は弾力性があるため「伸びる」事があります。一度伸ばしてしまい時間が経過したものはそのまま元に戻らなくなってしまいます。
マレットフィンガー
マレットフィンガーは次のように3つのタイプに分類されます。
3つのタイプは突き指により脱臼を伴うもの、伸筋腱(指を伸ばすヒモ)が断裂したもの、伸筋腱が切れずに、腱が付いている指先の甲側の骨が剥離骨折したものとに分かれます。
- 脱臼を伴うもの
- 伸筋腱が切れたもの
- 腱は切れずに剥離骨折したもの
骨折型のマレット変形は指先の第一関節の甲側が剥離骨折します。(図の上から3番目)
マレットフィンガーの中では「腱が切れたもの」か「剥離骨折があるもの」かの違いが重要になります。
突き指の検査法
突き指の検査法
捻挫でマレット変形していない場合、レントゲンには靭帯や関節軟骨の損傷は写らないため、骨に異常がなければ痛みや腫れの状態から視診、触診で判断します。
- 視診 (ししん) : 目で見て診察する事
- 触診 (しょくしん) : 手で触れて診察する事
特に指の側副靭帯の完全断裂では、指を伸ばした状態で横から力を加えると、関節が動いてしまうのでグラグラします。
マレットフィンガーの検査法
マレットフィンガーの場合、指の第1関節が曲がってしまうので、あとは腱が切れているのか、剥離骨折なのかをレントゲンから確認します。(レントゲンで剥離骨折が無いマレット変形では腱の断裂だと分かります)
視診、触診で確認する場合には、指を真っ直ぐに伸ばした状態で第1関節が曲がっていないかどうかを確認します。
判別しにくい場合はその状態で指先の爪の上から痛めた指を抑えて、指先を伸ばせるかどうかを確認します。
指先に力が入らず、第1関節が動かなければ (伸びなければ) マレットフィンガーの可能性が高くなります。
突き指の治療法
突き指の治療
突き指をした直後から冷却などの
RICE処置
を行います。
RICE処置について詳しくはこちら ⬇︎
RICE処置。ケガをしたらまず行う事とは?
軽度の場合は包帯やテーピング固定で2〜3週間程度で治癒します。
靭帯損傷 (部分断裂) など重度の場合、アルフェンスやシーネ (当て木) の固定で3週間〜5週間程度は固定します。
その後は関節のリハビリで徐々に関節の動きを戻します。
固定期間が長くなるほど組織の回復を望めますが、リハビリ開始時期が遅れるため、腱の癒着や関節拘縮により関節が動かなくなる事があります。
靭帯が完全に断裂したものは手術適応となります。指の専門の科は形成外科なので、そちらを受診されると安心です。
その他、よく皆様が心配される症状があります。冒頭にも少し触れましたが、突き指の中には指の関節の側面がうっすら赤く腫れて、そのまま長期間なかなか治りそうで治らないものがあります。
これは側副靭帯を一部損傷している可能性があり、治るまでに数ヶ月 (2ヶ月程度) はかかると思っていただくと安心かと思います。
強いて言うなら突き指をした事で関節が亜脱臼 (少し外れかける) の状態であれば効果があります。
また、マレット変形の図の1番上の脱臼タイプに関しては牽引して (引っ張って) 整復する必要があります。
単に突き指タイプでは靭帯の損傷が悪化する事もあるので引っ張らないようにしましょう。
マレットフィンガーの治療
腱の断裂がある場合
指の腱は細く平たいので手術による縫合が困難です。そのため通常は
保存療法
とします。
手術を選択したものでも繋げた腱が再断裂してしまい、指の形が元に戻ってしまう (第1関節が曲がってしまう) ことがあります。
受傷時は腫れと痛みが強いためよく冷やし、指の第一関節を
過伸展
とし、切れた腱と腱を寄せてバネ式固定用装具やアルフェンス、シーネで10週間程度固定します。
出典 : 手の外科シリーズ 6
剥離骨折の場合
保存療法では指の第一関節を過伸展とし、その状態で剥離した骨片(骨のかけら)を指で押して整復します。
指を反ったまま専用装具やマレットフィンガー用に形作ったアルフェンスシーネで過伸展を保ち3~4週間ほど固定します。
観血療法(手術)では細いピンをちょうど爪と関節の間の剥離した骨にピンニング(くし刺し)し、やはり関節を伸展位に固定します。
出典 : 手の外科シリーズ 6
まとめ
突き指は軽く見られがちですが、非常に重度のものもあり、痛みや腫れがなかなかとれないものや指の変形を残すこともありますので注意が必要です。