身体の関節が硬い柔らかいなど、人によって関節の動きは様々です。
その中でも関節の動きが大きすぎるものは「過剰運動症候群 (かじょううんどうしょうこうぐん) 」と呼ばれ問題となります。
ここではそんな過剰運動症候群について見ていきます。
どんな病気か?
それでは「過剰運動症候群」とはどのようなものなのでしょうか?
身体の関節は各関節ごとに決まった動きがあります。
例えば、「肩」や「股関節」などは大き円を描くように動かすことができますが、「肘 (ひじ)」や「膝 (ひざ)」などは少しの捻りが可能であってもほぼ曲げ伸ばしの方向にしか動きません。
このように各関節はそれぞれ決まった動きを行いますが、そのほとんどの関節が過稼働 (必要以上に動いてしまうこと) してしまうものが過剰運動症候群です。
つまりは関節が緩い状態です。
自分の周囲に関節がやたらと柔らかくて、指や手首が異常に反り返る人を見たことがあるかも知れません。
その動きの度合いが大きいと問題となり、さらにそのような方は全身の関節が緩い場合がほとんどです。
原因は何か?
過剰運動症候群になる原因の可能性として様々なものが考えられていますが、多くは遺伝、体質的な要素が大きいです。
また、関節が緩いという基準が曖昧でどこからが異常な状態かが分からず、本人が気づいていないケースも多々あります。
患者数も正確な統計が無く、はっきりとは分かっていません。ただし少なくはないようです。
何が問題なのか?
関節が柔らかいと聞けば、「硬いより全然いい」とか「ストレッチやヨガなど余裕でうらやましい」なんて思われるかもしれません。
しかし、その柔らかさが問題となります。
「柔らかい」というより「緩い」と表現した方が良さそうですが、例えば真っ直ぐ伸ばした膝 (ひざ) の関節がさらに伸びて反り返るとしましょう。
いわゆる反張膝 (はんちょうひざ) と呼ばれる状態ですが、関節の前側に体重がかかり負荷が集中しますよね?さらに膝関節両側の側副靭帯は前方へ変位し、太ももからひざ裏側の腱に強いストレスがかかります。
この状態が長く続くと膝関節の様々な部分が損傷していきます。
その他、関節痛と繰り返しの脱臼や注)亜脱臼による関節へのダメージが問題となります。
亜脱臼 : あだっきゅう。関節が完全には外れていないが、外れかけている状態。
過剰運動症候群は関節の脱臼を繰り返すことも多く、関節の軟骨、靭帯の損傷や関節を包んでいる関節包 (かんせつほう) という袋が破れてしまい更に脱臼しやすくなる傾向があります。
過剰運動症候群の診断
では、どの程度関節が緩いと過剰運動症候群と診断されるのでしょうか?
この辺りも明確な基準がなく、関節の動きが大きく緩い事で関節痛や亜脱臼、脱臼を繰り返すようであればこの疾患が疑われます。
逆に言えば、関節の動きが大きく緩い状態でも痛みが無い、脱臼しない状態であればただの「身体の柔らかい人」と言うことになります。
過剰運動症候群と似た症状の疾患に「エーラスダンロス症候群」があります。
これはコラーゲン線維の形成異常が原因で、 皮膚が伸びやすかったり弱くなる他、関節の緩みが特徴です。
過剰運動症候群の治し方
自分が過剰運動症候群と分かったらどうすれば良いのでしょうか?
この疾患はもともと身体の関節がやわらか過ぎて痛みを発症することから、体質の面が大きく、原因から治すということはできません。
そのため過剰運動症候群の治療としては主に注)対症療法が行われます。
対症療法 : たいしょうりょうほう。病気の原因に対してではなく、その時の症状を軽減するために行われる治療法。
対症療法としては関節を温めたり、筋肉を付ける運動療法や痛みを軽減させる電気治療などを行います。
特に関節が脱臼してしまう重度のものでは関節が外れない範囲での動かし方や生活指導などが行われます。
まとめ
子供の頃から単に体が柔らかいと思っていたら過剰運動症候群だったという事がよくあります。
つまり、この疾患は病気というより個性の面が強いようです。ですから治すというよりは「うまく使う」事が大切です。
関節が外れやすい、関節の痛みが出やすいという症状が少なければ「単に身体の柔らかい人」で良いのではないかと思います。
過度の関節の痛みや不安定的な特徴に疾患名を付けるとすると、この疾患名になると言うことですね!